IFRポジションペーパー
ヒューマノイドロボット 「未来」と「現在」
発表:2025年7月
発行:国際ロボット連盟(ドイツ・フランクフルト)
エグゼクティブサマリーと主なポイント
ヒューマノイドロボットへの高まる期待
ヒューマノイドロボットが家庭や職場、公共空間で活躍する。そうした未来のイメージが、人々の関心をますます集めている。これには文化的な背景があり、ヒューマノイドロボットは長らくSFの世界、特にSF映画において欠かせない存在であった。こうした架空の存在が現実のものとなるかもしれないと、人々は期待に胸をふくらませている。近年はSNS上にAI搭載ヒューマノイドロボットの可能性を紹介した動画もあり、人々の関心をさらにかきたてている。こうした動きは、近い将来、ロボティクスに革命が起きることを示唆している。
人間中心の環境向けロボット
ヒューマノイドロボット製作の背後には、人間中心の環境においてタスクに取り組み、研究及び実用化の両面でロボティクスの限界に挑戦するという目標がある。具体的には、一つの作業のみを行うのではなく、様々な作業がこなせる汎用ロボットを作り上げることである。多くの先進諸国では、慢性的に労働力が不足し、近い将来人口動態が変化することが見込まれる。そのため、製造業やサービス業を維持するために、即戦力となる万能な支援者が必要となることは明らかである。私たちの環境が人間の身体に最適化されているという点では、人間の動作や形状をベースとして作られた汎用ロボットは有利になるであろう。技術が進化するにつれ、こうしたロボットの活躍の場が、産業用途からサービス用途まで、様々な分野に広がっていくことが期待される。
(定義については「IN BRIEF」を参照のこと。)
開発を推し進める技術トレンド
ここ数年の間に、AIの進化や機械学習、コアコンポーネントの改良など、重要な技術的進展が見られ、ヒューマノイドロボットの能力向上へとつながっている。特に、生成AIにより、ヒューマノイドロボットが能力を身に付けるための新たな方法が登場することとなった。模倣学習が可能となり、さらには自身でタスクを解決することもできる。また、従来のロボットのプログラミング方法が変わり、スマートマニュファクチャリングにおける新たな活用場面が生まれる可能性がある。
(詳細は「DEEP DIVE “Technological Trends”」を参照のこと。)
米国:テック企業と政府による投資
個人投資家だけでなく、NVIDIA、テスラ、Amazonなどの大手テック企業もヒューマノイドロボットへの巨額な投資を表明しており、ロボティクスに革命が起きるという考えは強固なものとなっている。ヒューマノイドロボット開発を手掛けるスタートアップ企業が増え続けていることも、現在の流行に拍車をかけている。また、ヒューマノイドロボットの軍事・防衛利用への関心は非常に高く、米国国防高等研究計画局(DARPA)及び米国国防総省は多額の財政的支援を行っている。
中国:ヒューマノイドロボット開発を推進
一方で、世界最大の産業用ロボット市場である中国は、ヒューマノイドロボットの量産化という大いなる野望について具体的な目標を公表した。同国の工業・情報化部(MIIT)は、コンピュータやスマートフォンと同様に、ヒューマノイドロボットが製造業の在り方や私たちの生活様式を大きく変え得る、新たな破壊的技術となる可能性があると予測している。最先端技術としてヒューマノイドロボット開発を推進する中国の取組みは、ロボティクスを他の新興技術と融合させる重要な一歩である。
(詳細は「DEEP DIVE - Humanoid adoption by region」を参照のこと。)
図1:ヒューマノイドロボットが労働力供給のギャップを埋めていく。画像出典:iStock.com/Kinwun
国際ロボット連盟(IFR)が作成したポジションペーパー(英文)の、エグゼクティブサマリーの日本語参考訳を掲載しています。
なお、原文と日本語参考訳との間に齟齬がある場合は、原文の内容が優先されます。
原文(Humanoid Robots - Vision and Reality)は こちらからダウンロードいただけます(要登録)。