IFRプレスリリース
2021年のロボット業界5大トレンド
掲載日:2021年3月11日
ロボットは新たなスキルを習得し、CO2排出量の削減に寄与
【2021年2月17日 フランクフルト】 世界の工場における産業用ロボットの年間設置台数は、この10年(2010~2019年)の間に3倍以上に増え、38万1,000台に達した。国際ロボット連盟(IFR)は、世界の産業を形作る5大トレンドを示している。
スマートプロダクション © KUKA
「従来の生産方式をデジタル化戦略と組み合わせるという目標に向け、ロボットが先頭に立つ存在となる」とIFR事務局長のスザンヌ・ビーラー博士は述べている。
新たなスキルを習得
人工知能ソフトウェアをビジョンシステムやその他のセンシングシステムと併用することで、ロボットは困難な作業も習得できるようになる。そうした作業の一つに、これまで人手によってのみ可能であったビンピッキングがある。新世代のロボットは、設置やプログラミングがしやすく、接続可能でもある。通信プロトコルの進歩によって、ロボットが自動化戦略やインダストリー4.0戦略の中にシームレスに組み込まれていく。
スマートファクトリーで活躍
自動車産業は、産業用ロボットを組立工程全体に取り入れ、他に先駆けてスマートファクトリーソリューションを導入した産業である。組立工程は、100年以上の間、従来の自動車製造における中心的な工程であった。今後は、ロボットは無人搬送車(AGV)と、より厳密に言えば、自律走行搬送ロボット(AMR)と相互にネットワークでつながる時代になる。こうした移動ロボットは、最新のナビゲーション技術を搭載しており、従来の製造ラインと比べてはるかに柔軟性が高い。無人搬送システムで運ばれた車体は、組立工程から分岐し、個別に用意された部品組立が可能な組立ステーションに再合流することができる。自動車のモデルが全面的に変更になった場合でも、既存の製造ライン全体を解体する必要はなく、ロボットとAMRを再プログラムするだけでよい。人間とロボットが協働する現場が浸透するにつれ、ロボットサプライヤからは、ロボットが安全柵のない環境で人間と協力しながら活躍しているという報告が上がっている。
マルチセンシング自律走行車(MAV)に搭載された軽量アジャイル補助ロボット(LARA)による製品のパレタイジング作業
© NEURA Robotics GmbH
新たな市場への参入
接続性が飛躍的に向上したことで、これまで自動化に取り組んでこなかった製造分野におけるロボットの導入事例が増えている。例えば、食品・飲料、繊維、木製品、プラスチックといった分野である。現在進行中のデジタルトランスフォーメーション(DX)により、全く新たなビジネスモデルが生まれると考えられる。製造業者にとって、多角化を図ることがかつてないほど容易になるためだ。スマートファクトリーでは、様々な製品を同じ設備で順に組み立てる。昔ながらの製造ラインはもはや存在しない。
CO2排出量の削減
最新のロボット技術への投資は、CO2削減への動きによっても進むと考えられる。最新のロボットはエネルギー効率が良く、生産時のエネルギー消費量の削減に直結する。ロボットの精度がさらに高まることで、不良品や不適合品の発生件数も減少し、生産性の向上につながる。また、ロボットは、太陽電池や水素燃料電池といった再生可能エネルギーによる生産の費用対効果を高める。
サプライチェーンの維持
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、グローバル化が進むサプライチェーンの弱点を顕在化させた。製造業者は供給の見通しについて、これまでとは全く異なった形を検討することとなった。自動化によって各国の生産性が同水準になると、製造業者は、欧州連合の多くの国や北米、日本、韓国といった人件費の高い国々では困難だと思われた生産活動を増やすことが可能になる。ロボットによる自動化は、生産性、柔軟性、そして安全性をもたらす。
「ロボット技術の進歩は、ロボット導入事例の増加につながる」とIFR事務局長のスザンヌ・ビーラー博士は説明する。「新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて生まれた新たなトレンドはまだないが、ロボットを従来の枠にとらわれずに使用する流れは加速した。この点において、今回のパンデミックが、産業構造を変える唯一かつ最大の原動力となったことが証明されたといえる。」
国際ロボット連盟(IFR)が配信するプレスリリース(英文)の日本語参考訳を掲載しています。なお、原文と日本語参考訳との間に齟齬がある場合は、原文の内容が優先されます。
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