IFRプレスリリース

サービスロボット調査結果:世界の業務用サービスロボットの売上高が32%増加

掲載日:2020年11月12日

物流ロボットは前年比110%増、医療ロボットは前年比28%増を記録

【2020年10月28日 フランクフルト】 国際ロボット連盟(IFR)がこの度発表した「World Robotics 2020 – Service Robots」によると、世界の業務用サービスロボットの売上高(2018-2019)は、前年比32%増の112億米ドル(約1.22兆円*)となった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受け、市場はさらに拡大すると考えられ、消毒ロボット、工場・倉庫内物流ロボット、宅配ロボットに対する需要が高いことはその表れである。

業務用サービスロボット―主要用途別2018年と2019年の売上高及び2020~2023年の売上予測Graph Service Robots © World Robotics 2020

業務用サービスロボット―主要用途別
2018年と2019年の売上高及び2020~2023年の売上予測
Graph Service Robots © World Robotics 2020

金額ベースでは、医療用ロボットの売上が、2019年の業務用サービスロボットの売上全体の47%を占めている。これは、医療用ロボットに分類されるもののうち、最も高価であるロボット手術システムが金額を押し上げたことが大きい。医療用ロボットの売上高は、前年比28%増の53億米ドル(約5,777億円)と過去最高を記録し、2022年までに現在の倍以上の113億米ドル(約1.23兆円)を達成する可能性がある。医療ロボットの約9割は、米国及び欧州のサプライヤが供給している。

業務用サービスロボット―物流ロボット

2019年に販売もしくはリースされた物流ロボットの市場規模は、前年比110%増の19億米ドル(約2,071億円)であった。そのほぼ全てが、屋内で使用される物流ロボットである。自律走行搬送ロボット(AMR)は、当初倉庫内で使用されていたが、製造のデジタル化によって今日ではスマートファクトリーの一部にもなっている。そのため、売上高は今後も好調を維持すると見込まれ、年間成長率40%以上が期待されている。「製造工程における物流ロボットへの投資はすぐに償却される」とIFRのミルトン・ゲリー会長は述べている。「ロボットを24時間稼働させた場合、投資額は2~3年以内、多くの場合さらに早いタイミングで回収できるだろう。耐用年数を15年とすると、稼働コストは年間投資額の5%程度である。高性能なシステムでは、稼働率98%以上となるケースも多い。」

個人/家庭用サービスロボット 2018年と2019年の売上高及び2020~2023年の売上予測 Graph Service Robots © World Robotics 2020

個人/家庭用サービスロボット
2018年と2019年の売上高及び2020~2023年の売上予測
Graph Service Robots © World Robotics 2020

Robotics-as-a-Service(RaaS)というビジネスモデルがトレンドとなっているが、これがロボットによる自動化への顧客のハードルを下げている。ハードウェアへ投資する必要がないため、顧客側には、固定資本が存在しない、固定費がかからない、オペレータが不要というメリットがある。非製造業における物流システムの利用については、大手EC企業の倉庫内物流システムが大きく牽引している。業務用サービスロボットを活用した病院内物流も非常に将来性のあるカテゴリである。業務用サービスロボットについては、今回調査できた物流ロボットの約9割が欧州製及び北米製であり、残りの約1割がアジア製であった。

業務用サービスロボット―フィールドロボット

フィールドロボットには、農業、酪農、畜産、その他のフィールド用途(鉱業、宇宙など)が含まれる。2019年の売上高は、前年比3%増の13億米ドル(約1,417億円)であった。今後の供給については、COVID-19の影響を受ける可能性がある。例えば、例年収穫時期に西欧に来ていた東欧の労働者が、渡航制限により移動できなくなったことで、労働力が不足する事態が生じた。その代替として、農家はフィールドロボットを活用することになるかもしれない。農業用ロボットの売上高については、成長率30%以上は達成可能だと考えられる。

個人/家庭用サービスロボット

個人/家庭用サービスロボットは、大量生産された、主に家庭で使用されるロボットを指す。床清掃ロボット(ロボット掃除機)、芝刈りロボット、エンタテイメントロボットが含まれる。2019年の個人/家庭用サービスロボットの販売台数は34%増加し、2,320万台以上を記録した。売上高は前年比20%増の57億米ドル(約6,213億円)であった。二大カテゴリであるロボット掃除機とトイロボットについては、近年販売単価が下がりつつある。今では、基本的なロボット掃除機であれば100米ドル(約1万1,000円)以下で入手可能である。2019年に調査できた家庭用サービスロボット(床清掃ロボット(ロボット掃除機)、芝刈りロボット、その他家庭用ロボット)の75%は米国製であり、アジア製は19%、欧州製は6%であった。

個人/家庭用サービスロボット 2018年と2019年の販売台数及び2020~2023年の販売予測 Graph Service Robots © World Robotics 2020

個人/家庭用サービスロボット
2018年と2019年の販売台数及び2020~2023年の販売予測
Graph Service Robots © World Robotics 2020

市場が拡大しているカテゴリとして、高齢者・障がい者支援ロボットがある。推定売上高は、前年比17%増の9,100万米ドル(約99億円)であった。多くの国々が、今後サービスロボットの巨大市場となるこの分野に注目し、非常に多くの調査プロジェクトを実施している。エンタテイメントロボットの多くとは異なり、高齢者・障がい者支援ロボットには先端技術が用いられている。

「サービスロボットの売上については、業務用、個人用のいずれも、引き続き堅調な伸びが見込まれている」とゲリー会長は述べている。

* 米ドルの円換算については、IMF・IFSの2019年平均為替レート(1米ドル=109.01円)を使用してJARAにて行い、追記した。

国際ロボット連盟(IFR)が配信するプレスリリース(英文)の日本語参考訳を掲載しています。
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