ロボットの歴史

人間に似た、自動で動く機械。これは、古代ギリシャ時代から続く、人々の長年の夢でした。20世紀に「ロボット」という言葉が生まれるはるか昔から、神話や物語にロボットのようなものが登場しています。
15世紀に「ぜんまいばね」が発明されると、機械仕掛けで動く人形が発明され、日本では「からくり人形」(17世紀)、ヨーロッパでは「オートマタ」(18世紀)が作られるようになりました。これらは「ロボット」の始まりと言えるかもしれません。

「ロボット」の誕生

18世紀後半に始まった産業革命により工業化が進むと、自動化への関心が高まりました。また、二度の世界大戦で科学技術の軍事利用や兵器開発が進んだことで、様々な技術が発展し、後のロボット開発に大きな影響を与えました。
現在世界で最も活躍している、製造業向けの「産業用ロボット」が誕生したのは、1960年代のアメリカでのことです。単純作業や重労働を人間の代わりに担う存在として生まれました。

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アメリカで生まれた「産業用ロボット」

産業用ロボットの誕生に深く関わったのは、ジョージ・C・デボルと、後に「ロボットの父」と呼ばれるジョセフ・F・エンゲルバーガーの2人のアメリカ人でした。
1954年にデボルが発表した、教え込んだ動きを再生することで動く「プレイバックロボット」の概念は、「産業用ロボット」のコンセプトの始まりとされています。これを基に、エンゲルバーガーが設立したコンソリデイテッド・コントロールズ(CC)社が1958年にプレイバックロボットのプロトタイプを発表し、その後、2人は世界初の産業用ロボット製造会社「ユニメーション社」を設立しました。
1962年に実用第1号機である「ユニメート」(ユニメーション社)、「バーサトラン」(AMF社)が発表されると、人手不足に悩む自動車工場の溶接ラインに導入され、産業用ロボットは徐々に製造現場に広がっていきました。

日本における「ロボット」の広がり

日本では、高度経済成長期に入ると労働力不足が深刻化し、省人化や生産性の向上、労働環境の改善を目的として、アメリカから産業用ロボットの輸入を開始しました。
産業用ロボットの国産化が始まったのは、1960年代の終わりのことです。その後、様々な国内メーカが積極的に開発を進め、国産のロボット製品が次々と生まれました。1980年は日本の「ロボット元年」と呼ばれ、本格的な普及が始まります。アメリカで生まれた産業用ロボットは、日本で大きく発展していくこととなりました。

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日本初の国産・産業用ロボット
「川崎ユニメート2000型」(1969年)
(写真提供:川崎重工業株式会社)

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自動車産業、電気機械産業を中心にあらゆる製造業分野に普及していった産業用ロボットは、日本の製造業、ものづくりを支える存在となりました。同時に、日本は産業用ロボットの生産でも世界をリードするようになり、「ロボット大国」と呼ばれるまでに成長しました。
現在、少子高齢化による労働力不足などの社会課題がますます深刻化する中で、ロボットがこれらの課題を解決する技術として期待を集めています。

ロボットの研究開発が盛んに行われるようになると、ロボットを動かす動力源や機械構成も発展していきました。1960年代当初は油圧・空気圧駆動がメインであったロボットですが、1970年代に入ると電動化が進みます。また、同じ頃、より柔軟な作業を行うために、人間の腕に形を近づけた関節型のロボットが増えていき、やがて、電動多関節型のロボット構造が主流となっていきました。
産業用ロボットの機能が向上すると新しい用途への適用が始まり、用途を広げると新技術が開発され、さらにロボットの適用範囲が広がっていく。このようにしてロボット技術は発展していきました。
現在、ロボットの用途はますます広がり、多種多様なロボットが登場していますが、その基盤技術は産業用ロボットの発展の中で確立されたものです。

現在、大きな注目を集めているヒューマノイドロボットは、日本では1960年代から研究が始まりました。世界初の二足歩行型のヒューマノイドロボットは、1973年に早稲田大学の研究チームが開発した「WABOT-1」です。
1980年代に入ると本田技研工業(ホンダ)も二足歩行ロボットの研究を開始し、1996年に「P2」を発表しました。「P2」は、世界で初めて自分でバランスをとりながらスムーズに歩行するロボットで、これに改良が加えられ、2000年に「ASIMO」が誕生します。「ASIMO」は、二足歩行が可能なだけでなく、当時としては高い知的能力と運動能力を備えた画期的なロボットで、一大ブームを巻き起こしました。

身近な存在となったロボット

世界中に広がった産業用ロボットですが、2000年代に入ると、人と同じ場所で、人と一緒に作業することができる「協働ロボット」が開発されました。より人の近くで働くことができるため、今後も様々な場面での活用が期待されています。
また、ロボット技術の向上により、ものづくりの現場だけでなく、新たな分野で使用されるロボット(サービスロボットなど)が次々と登場し始めました。
生活分野や医療・福祉分野、公共分野など、ロボットが活躍する場は私たちの生活により身近なサービス分野にも着実に広がっています。また、コロナ禍を契機とした社会や生活スタイルの変化に伴い、ロボットの活用場面はさらに増え、街なかで働くロボットの姿が決して珍しいものではなくなってきました。

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参考:「サービスロボット技術発展の系統化調査」楠田喜宏、国立科学博物館(2005)
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これからのロボット開発

近年は生成AIやフィジカルAIなどのAI技術の発展が目覚ましく、そうした先端技術をロボットと組み合わせることでロボットの知能化が進み、世界的にヒューマノイドロボットの開発が活発化しています。ロボットの活躍の場はさらに広がり、できることがますます増え、古代ギリシャ時代からの人々の夢が現実のものとなりつつあります。人間とロボットが共生する未来が近づいてきました。

参考文献

  • 「産業用ロボット技術の系統化調査(2024年度版)」小平紀生、国立科学博物館(2024)
  • 『未来につながる!ロボットの技術』日本ロボット学会監修、株式会社誠文堂新光社(2023)
  • 『ロボット工学ハンドブック 第3版』一般社団法人日本ロボット学会編、株式会社コロナ社(2023)
  • 川崎重工業株式会社 ロボットビジネスセンター 50周年記念特設ウェブサイト
    「THE STORY OF KAWASAKI ROBOT」、川崎重工業株式会社(2025-06-27参照)
  • 『ロボットハンドブック』一般社団法人日本ロボット工業会(2005)